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小説「魔法と科学」 後編!

さてと。



後編の公開と行きましょう。




あ、いや。

違いますね。



後編の、後悔と行きます。



だってねぇ・・・。

こんなもん晒しあげ以外の何でもないっすよ・・・。苦笑。




ま、これの反応次第で次回の部誌の有無に・・・。



さてさて・・・・。



あ、前編はコチラから!!



部誌に1回で読みきりのを半分にしたので、前編読んでないと分かんないっすよ・・・。



さてと。


じゃ、昨日と同じく「読んでやんよ」をクリック!

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Ⅶ 「闇夜の遊撃隊」

「第5戦車中隊、射点移動。5分後3斉射せよ。」

「支援艦ネーレ、VLS 8時方向。」

「第2ヘリ大隊は40m後退し陣形を維持。」


 いざ、戦闘が始まると彼らは訓練通り殺到する通信を正確に処理していった。


 この陸上戦艦「レヒット」は旗艦であるため、同級のイスタ・バード級とは全く別の艦だと思えるほど改修が加えられている。その一番の違いは主砲を12門から4門に減らし、その分司令部であるブリッジを巨大化している点で、1800名もの司令部要員を収容することが可能になっている。現場の混乱が少ないのは、この艦の通信・司令部施設が十分以上の能力を持っていることが大きく貢献しているのは間違いない。

「敵、反撃率29%低下。 確認だけで2572撃墜。」

「敵、ランドタイプ壊滅。戦車隊は対空射撃に移行されたし。」


 様々な通信を背景に副官がローウェンに語りかけてきた。

「まさか本当に来るとは・・・閣下のご明察です」

「いや・・・正直、自分も本当に来るとは思ってなかった。半ばカンのようなものだったからな。 で、状況は?」


 副官はそう問われ、現在の最新のデータを用意し、説明を始めた。

 敵の地上部隊はほとんど撃滅に成功したこと、残った空中部隊が多少の抵抗をしているが、バリアの限界が近いであろうことが予測されていること、現在の損害は予想を若干下回る程度であること。併せて両翼の2軍がそろそろイーヴェン攻略を開始することも付け加えた。


 それらを聞いた限りでは、現場で不適切な指揮官がいるわけでもなく、各々がしっかりと任務を遂行しているので、ローウェンも何もすることはないと結論し、ゆっくりと司令官の椅子に腰かけた。




「どうなってんだよ!」


 先程からしきりに悪態をつきながら飛来するミサイルに対しバリアを張っているのは第2中隊長カシム・エリックである。

「俺も知らねぇよ!」


 ガウスは爆音に負けないくらいの大声をあげるが、恐らく半分も聞こえてないだろう。そう思った瞬間に、目の端でまた一人、機関砲に撃ち抜かれ地に引かれゆく友人の姿が見えた。


 彼らが気づいたとき、それは既にローウェン軍の包囲の真っただ中にあり、手遅れだった。

「おい、これ以上耐えれねぇぞ!」

「俺はもう無理だ! 投降する!」

「おい、待て! 降りるな!」


 そう言って地上に近づいた彼には砲弾が直撃、爆散した。ジョージニア軍兵士は一人でイースバード1個中隊に匹敵するとまで言われている。だが、武器を奪えば何もできないイースバードと違い、彼ら自身が武器なので捕虜にされることはまずなかった。

「このままじゃまずい! 第4小隊が囮になるから、みんなそのうちにっ!」


 確かに、この状況下では誰かが犠牲となって他を助けるしかないが、誰だってその生贄役にはなりたくない。だからガウスはあえてそれを志願した。言った直後、その言葉は部下をも巻き込むものだと思い至ったが、ミリーもパッティもパジェイも生き残っていた部下3人全員が何も言わずに隊長の指示に従ってくれた。


 ガウスはそんな部下達の・・・いや、仲間、家族同然の者達の悲壮な思いを察し、目だけで感謝した。長い間付き合っている彼らにはそれで十分なのである。

「我ら4人、欠けずに帰る。 ・・・行くぞ!」


 ガウスは突撃を開始した。4人一斉にプラズマ火球を夜空に放ち、辺りを照らす。赤外線誘導のミサイルは大抵このプラズマに飛んでいき、爆散する。

「ミリー! 敵の総大将の予想地点!」

「・・・2km、北!」

「パジェイ! 残りの魔力を確認し、消費を抑えろ! 敵総大将まで突っ切るぞ!」

「・・・了解! ほらっよ!」


 そう言い、パジェイは氷の刃を生み出し、地上へ振り下ろす。

「パッティ、5時方向! 2時方向は俺が!」


そう言い、ミサイル5ダースほどを爆散させる。機関銃が追撃してくるが、バリアで何とかなる威力しかない。


 これまでの戦闘による消費で飛行速度は最大速度の半分以下だが、その顔には希望という文字があった。「生きて帰る」隊長はそう言った。そう「命令」したのだ。しかし、彼らのその顔も長くは続かない。


ドゥゥン!

「・・・! パッティ!」


 至近距離で対空砲が炸裂したのだろう。対空砲の破片が左足に無数に突き立っている。

「隊長。 ・・・先に行ってください。」


 そう言うと、パッティは右手を左胸にあてた。


 それを見てとったガウスはパッティから離れ、そのまま北に向かう。


 背後で大きな爆発があり、半径100mを灰に変えた。残った3人は迫りくるミサイルを右に左に避け、時には爆散させて敵総大将の元へ急ぐ。


 あと少し・・・あと少し・・・そう自分に言い聞かせ続け、戦艦の巨体が迫った残り600m。

「・・・隊長。 後続の敵は私が。」


 小隊で唯一の女性、マリーだった。ガウスはただ「頼む」と短く言い、彼女を追い越す。言わなくてもわかる。魔力切れだ。


 やはり、敵本陣の真っただ中とあって、さらに迎撃は激しさを増し、その全てを避けきれない。砲弾をはじき、機銃を結晶化させ、真下にその目標を確認した二人は、急降下を行った。


 敵の将軍はさぞかし驚いているだろう。そんなことを思いつつも、残ったパジェイと共に意識を集中し始める。背後に多数の砲弾や機関銃が殺到してくるが、バリアは彼らが火球を目前の戦艦に叩き込むまで耐えてくれそうだった。そして、ガウスがあと少しと思った瞬間。


 ズドォォオン!


 大地を揺るがす、巨大な咆哮は、発せられるはずのない戦艦レヒットの主砲からだった。至近距離で信管を作動させたため、レヒット自身の窓ガラスも瞬時に吹き飛ぶ。だが、それを撃ち込まれたガウスらにとってはそれの比ではなく、勢いでそのまま地面にたたきつけられ、彼らの意識はそこで途絶えた。




 後にイーヴェン辺境戦と言われたこの戦いは、クルーガー大隊が壊滅し、ローウェン軍が圧倒的勝利を収めたとして後世に伝えられる。





Ⅷ 「再会」

「う・・・あ・・・?」


 次にガウスが目を覚ましたのは病床だった。看護医に事情を聞くと、信じられない話だが、自分は捕虜となり、23年前に結ばれた捕虜交換条約によって、イーヴェンから130kmほど北方の町、スストリスに運ばれたのだという。


 ガウスは掌で魔法を唱え、今日のニュースを開いた。同時に軍司令部に連絡。部下から一連の戦闘結果を聞いた。


 奇襲をかけたクルーガー隊は4割が戦死・行方不明。3割が負傷という有様で、イーヴェン防衛隊長のトマス上尉がクルーガーに援軍を送ったために、手薄になったイーヴェンも陥落したという。その援軍は、敗走してくるクルーガー達と合流しただけというから、トマス上尉の采配の悪さが再度露呈したといえよう。


 ガウスがそんな報告を受けていると、突然ニュースの画面が荒れ、イースバードの国旗が映し出された。違うチャンネルに変えても同じ画面しか映し出さない。


 そして、そこに映し出された人物を見て、ガウスは驚愕する。

「ジョージニア連邦並びに、コロンビア大陸に住む全ての者たちに告ぐ。 私は、コロンビア大陸侵攻軍総司令、ローウェン・ターナーである。」


 画面に映し出されたのは、まさしくローウェンその人だった。
 しかし、ガウスにとってはローウェンを「憎き敵」とか「部下の仇」とかではなく、それ以前に

「・・・兄さん」


 と呼称する表現があった。

「我が軍は、先日南方軍最後の砦、イーヴェン攻略を完了させ、残るは中央軍と北方軍となった。 しかし、我々は無益な流血を好まない。 よって、ここに我々は諸君らジョージニア政府と国民に対し、無条件降伏を要請する! 降伏の暁には、我ら主導の下で統治を行い、復興を目指す。 もちろん、現在ジョージニアが抱えている飢餓・福祉の問題もすべて解決させ、我らイースバードとジョージニア国民が手を取り合い、発展への道を進むのである! 私は、ジョージニア政府はこの要請に対し冷静かつ理性的な対応を行ってくれるものと信じている。 ・・・なお、我々には260万の機甲軍と、500万の援軍の用意があるため、それをお忘れなく。 繰り返す。直ちに・・・」


 ローウェンがもう一度内容を繰り返そうとしたときには既にガウスは掌を閉じ、病室から抜け出していた。


 このとき、ガウスは聞き逃していたがローウェンは5日間の期限を設けた。この通達が言い渡された瞬間から各地では戦争反対と徹底抗戦のデモが発生し治安が悪化。警察では手に負えず、軍隊が出動する規模のものもあり、病室を抜け出したガウスのことなど気に留める者はいなかった。


 その混乱の元凶、ローウェンの元にコロンビアの訪問者が来たのは降伏勧告から4日後のことである。





Ⅸ 「魔法と科学」

「ガウス、君には失望した。」

「兄さんこそ・・・! 他の国の幸せを奪って!」


 コロンビアの訪問者、ガウスは8年ぶりに兄と再会していた。否、この場合は対峙していたという方が正しい。


 ローウェンは未だ窓ガラスが割れたままのレヒットから望遠モニターでガウスを睨み、外部スピーカーで声を送る。

「笑止! コロンビアを我がイースバードが正し、幸福実現のために導いてやろうというのに!」


 それに対しガウスは魔法で声を増幅させ返す。

「それは独りよがりだ! そんなことされなくても、自分たちは細々だとしても、幸せに生きていける!」

「否! コロンビアの人口が増えれば、逆のことが起きる! 私は20年・30年後の我がイースバードのためにこの国を潰す! 魔法など、異形の力など、人が持つべきではないのだ!」


 普段、寡黙で知られるローウェンがここまで感情を出すのは滅多にない。そして、次のガウスの言葉でついにローウェンは動き出す。

「結局、兄さんは自分のことしか考えていない!」

「・・・! それが我がイースバードに忠誠を誓う軍人のあるべき姿だ!」


 そう吐き捨てるように言い放ち、ローウェンはスイッチを押す。



ズズッダダダダン!



 ガウスがいた地点周辺を地雷で吹き飛ばしたローウェン。このレヒットでさえ爆沈確実の威力だが、もちろん、これくらいではガウスは死なない。

「全軍、全力攻撃! 撃ち方、始め!」



ちなみにローウェン軍の兵力は、陸軍機甲師団32個。


戦艦96隻・支援艦160隻・主力戦車6万4千両・多連装ロケット砲・戦闘ヘリ各3万2千両・歩兵19万2千人。後方の支援部隊(高射師団)も含めると85万人の大部隊である。


 後に東西決戦と呼ばれた戦いが幕を開けた。




重地雷をバリアで防ぎながら飛翔したガウスは、目標をローウェン軍の右翼部隊に定め、ロール運動で対空ミサイルをかわす。避けきれない分は氷塊をぶつけ爆散させるか、プラズマ弾を放って誤爆させる。


 ガウスはそのまま何事も無いかの如く、部隊の上空に到着し狙いを定め、右手に意識を集中する。刹那、空中より無数の氷塊が地面へ降り注ぎ、対するローウェン軍は弾幕で対抗し、そのいくつかを無効化する。その光景は氷と炎の入り混じる神秘的な光景だったが、撃墜を逃れた氷塊が地上に降り注ぎ、残骸を生み出す姿はそれと対称的な光景と言える。


 たった1度の攻撃だったが、これだけで3個中隊が一瞬にして消え去った。ローウェン軍からは五月雨のような砲火が止んだが、一瞬経てば思い出したようにミサイルや砲弾が1秒当たり数百という数で飛んでくる。


 キラキラと、ガウスの腕が光るたびに地上に無数の氷の刃が突き立ち、戦車の車体に穴をあけ、歩兵を吹き飛ばし、戦闘ヘリが爆散しながら地上へと引かれてゆく。陸上戦艦には真空波による不可視の刃が迫り、切り刻み巨大な爆発を起こす。反対に、地から空へ飛翔するミサイルや砲弾、機銃と言った無機物は大抵が避けられ、爆散させられ、かろうじて到達したものもバリアで防がれる。


 そんな自軍の様子をローウェンは苦々しい様子でレヒットの中央モニターで見つめていた。



「第2通信手、全高射師団に通達。弾幕を形成し、地上へ追い込め。命中させるな!」

「第12通信手。両翼の第9・第14戦艦打撃艦隊に通達。主砲、3門のみ焼夷弾装填。残りは徹甲弾装填! 3分後、位置座標480016へ向け斉射!」

「第23通信手! 第9・第22・第30ロケット砲師団に同内容通達!」


 この指令を即座に出すあたり、やはりローウェンは上級大将に相応しいだけの戦術指揮能力を有しているといえた。


 一方のガウスは、自身を狙ってくる砲弾が、自分を囲み始めたため、下降するほかなくなった。全てがローウェンの思惑通りで、ガウスが降下した地点はまさしくローウェンが各部隊へ通達した座標と同じだった。

「・・・2 ・・・1 ・・・撃てぇ!」


 戦艦・支援艦合計16隻の主砲と三千両のロケット砲が一斉に吠えた。



「・・・!」

 ガウスはその一段と巨大な咆哮を聞き、周囲をうかがったが、既に遅かった。着地と同時に百を超す巨弾と数万のミサイルが飛来したからである。


 大地が震えた。2kmほど離れたレヒットからでもそう感じた。煙が晴れたそこには、大穴がいくつもあいて、クレーターと言っても信じてしまいそうな大きさである。

「・・・・・・。」


 ローウェンは怒りを顔に浮かばせて、両手を握りしめていた。彼が怒っているのはガウスが生きていることではない。


彼の仲間が16ダースほど増えたことである。



「大丈夫かい? 隊長さん。」

「少し、遅れたようですが、セーフですよね?」

「・・・無事そうでなにより。」


 三者三様の言葉でガウスを気遣ったのは、元部下の3人、マリー・パッティ・パジェイだった。

「お前ら・・・?」


 ガウスは彼らを死んだものだと思っていた。しかし、彼らも同様にあの日ローウェンの捕虜となり、違う病室に入院させられていたのだ。そして、病室を飛び出したガウスを偶然パジェイが目撃し、こうして有志を募って来たのだという。


「さて、ここから必死の反撃ね。」

「もしも勝ったら教科書に載るかもしれませんね。」

「・・・隊長。ご指示を。」


 ガウスはそれにうなずきながら、210人の新しい「仲間」に指示を与えた。

「う、右翼の軍が襲撃を受けております!」

「第21師団、通信途絶!」

「第8高射連隊! 2時方向に・・・! こちらも通信途絶!」

「さ、左翼にも新たな敵援軍! 陣形が崩れます!」

「・・・コロンビアごときが!」


 ローウェンはそう唸ったが、形成は一気に逆転した。もとより、ガウス一人に対しての陣形だったのである。それを一気に別方向から攻め立てられたので、なだれをうって崩れ始めた。

「閣下! 形成を立て直し、以後再戦を!」


 副官がそう進言した。並の司令官であればその進言に従ったであろう。しかし、ローウェンは一般的な凡庸司令官ではない。ゆえにその進言を聞き入れなかった。

「第10通信手! 第2~14師団を前面に!」

「第11通信手! 両翼の軍を統合しつつ本隊に合流!」

「第2通信手は高射師団との連絡を!」

「第4通信手は全戦闘ヘリ師団を上空援護に回すよう通達せよ!」


 ローウェン軍はシーランス陣形だった陣形を中央へ集め始めた。戦力の集中は濃密な弾幕を生み出すが、一度の攻撃で壊滅しやすい。禁じ手と言われたこの布陣をあえてローウェンは行ったのだ。


 そして、その効果は両軍に思いもよらぬ結果をもたらした。

「敵、25撃破! 我が軍、混乱を回復しつつあります!」

「第23師団、合流完了。反撃を開始しました!」


 再度勢いを盛り返したローウェン軍。やはりローウェンは戦術指揮に於いて絶大な能力を持っている。


 しかし、それは常識的な出来事の中であって、非常識の前には弱い。


 そして、魔法というのは彼らからすれば非常識の塊なのである。


 爆震が大地を伝わり、空をも貫いた。

「ブラッディエ・カリバー・・・。やはりお前も・・・。」


 直径10kmほどのクレーターと、そこにあったはずの9個機甲師団を見ながらローウェンがそう呼んだ魔法。かつて偉大な魔法学の権威だった二人の父、アラン・ターナーが生み出した究極魔法。最大限の威力であればコロンビア大陸ごと消せる魔法。そして、彼ら兄弟が生き別れる原因となった魔法であり、今しがた失った部下の悲しみと強い怒りによって覚醒された魔法。

「・・・・・・・・・」


 レヒットの艦内は水を打ったように静まり返っている。
それもそのはず。あんな魔法は誰も見たことがない。

「ひ・・・ひぃぃやぁあぁ!」


 全軍に混乱が伝わったのは一瞬だった。戦闘ヘリが勝手に動き味方と衝突、戦車は歩兵を引き倒しながら右往左往する。そして、ジョージニア軍が攻撃を加えさらに混乱が拡大する。



 戦線は崩壊した。



「閣下! 撤退を! これ以上の戦闘継続は不可能です!」


 副官はそう進言したが、ローウェンは聞かない。

「レヒット、前進! 味方撤退の時間を稼ぐ! 主砲! 盛大に敵の注意を引け!」


 刹那、爆音が鳴りレヒットの体を揺さぶった。

「右舷、砲塔部付近に被弾!」

「消火班と医療チームを向かわせろ!」


 しかし、レヒットへの攻撃は激しさを増すばかりで、次々に襲い来る魔法弾を迎撃できないでいる。

「左舷、第二エリアより、連絡途絶えました!」

「機関出力、67%にまで低下!」

「味方は約13%が安全圏内まで撤退!」

「・・・! 左舷、上方より敵影!」


 司令部にいた人間が、ほぼ反射的に空を見上げる。レヒットは残りうる対空砲を撃ち出すが、その弾幕は悲しいほど薄い。接近したのはガウスだった。


「お前は・・・ 俺が・・・!」


 戦艦レヒットの目の前まで接近。割れた窓ガラスの向こう側に、司令艦橋の中の様子が見える。その中には、こちらを見て席を立つ者や驚いた顔のものが大勢いる。その中で唯一、司令官席に悠々と構えている者こそローウェンその人だった。

「俺の想い・・・喰らえぇ!」


 頭に先週のデジャヴが浮かび、ガウスがかざした右手。以前とは違い、瞬時に意識を集中。魔法弾を撃ちだし、眼前の兵器を爆散させる。


 戦艦レヒットの最後。それは味方の盾となり撃沈した旗艦として、後の世まで語り継がれることとなる。


 戦後、東西決戦と呼ばれたこの戦いは、ジョージニア軍の圧倒的勝利によって終結すると後年の教科書に記載されるが、その項目に勇敢なる兵士ガウスと侵略者たるローウェンの関係は何も書かれていない。





Ⅹ 「平和と犠牲」


 東西決戦から1週間。ドイチュ連邦を主体とするイースバード侵攻軍は、ローウェンを失ったことによって呆気なく瓦解。各地で包囲され、降伏するか玉砕するかの2択を迫られていた。当然のことながら、精鋭部隊であるガウスも掃討作戦に従事させられ、自分の家があるキャリフォール市に帰宅できたのは東西決戦から2週間と3日後のことであった。


 その前線からキャリフォール市へ戻る途中、ガウスはニュースで史上初の「相互永久不可侵条約」が締結されたことを知った。


 コロンビア本土での大敗を受けイースバード政府から打電された条約らしく、イースバード・ジョージニア共に、今後相手の国に干渉すること(政治的手段・経済的手段・武力的手段問わず)を一切禁止したものであった。


 さらに、「武力緩衝地帯条約」により、両大陸の中央に位置するハワイアナ諸島やティラーナ諸島への武力進出も禁止された。両大陸共に、大陸から6千km以上の武力進出は認められなくなったのである。


 それらを聞き、これから戦争のない世の中になると胸を躍らせたガウスだったが、軍縮によってクビになるかもしれないと思い至り、何とも言えない感情で部屋のドアを開けた。


 久々に帰宅したガウスを待っていたのは1つの郵便物だった。

「拝啓 親愛なるガウス・ターナー殿・・・?」


 よくある手紙の始め方だったが、差出人を見てガウスの目が止まる。

「ローウェン・・・!」


 確かにそう書いてあった。どうやったのか、うまく偽装してあり、一見して東側の手紙とは思えない。ガウスは本文に目をやる。そこにはこうあった。


「ティラン島事件から10年。久々の再開ではあるが、変りはないかな。
 さて、遠まわしに話すのは苦手なので、単刀直入に本題に入ろう。
 まず、我がイースバードに於いて、一番の戦争強硬派は陸軍、さらに言えばドイチュ連邦にある。西側のコロンビア諸国には伝わってはいないが、イギリシア帝国やスペアーヌ共和国では反戦の動きと財政難による軍縮の意見も出始めている。にもかかわらず、未だ戦争継続が主流派なのはドイチュ連邦が連合の中で一番大きな勢力を持っていることと、自分がいるからである。
 自分もドイチュ連邦陸軍の上級大将であり、強硬派の一翼。さらに、自分は軍功を重ねすぎた。人気者となり、戦争継続の世論を形成したことは間違いない。
 さて、ガウス。貴様ならばここまで読めばわかるだろうが・・・。 その強硬派の一翼とドイチュ連邦陸軍の主力が消えたらどうなるであろうか。正確には、ドイチュ連邦陸軍の全戦力にも価する陸軍機甲師団50個。さらに言えば、それらの補給部隊はイギリシア帝国が主体。それらが壊滅すれば・・・。
結果は近いうちに出るだろう。では。」 




 読み終えたガウスの手から滑り落ちた手紙には、そう書いてあった。


 ガウスは、兄・ローウェンを悲しむことも部下の敵として怒ることもなく、ただただ恨んだ。



 背後で「平和への歩み」と題されたパレードが行われる中、部屋にはただ小さな嗚咽の音が広がるのみ。






≪Fin≫













・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・。


あぁ! もう!!

恥ずかしいな!!


やれやれ・・・。


「自分何やってんだよ」感あふれる作品であります。




ま、どのみち、いつかは部誌になる作品ですので。

投稿しちゃえ!!



・・・はぁ。

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by rikipedia | 2009-10-12 20:45 | 歴史バカの日記